【ストーリー】ザ・ゴールデン2018エーファ編

(※架空/二次SS) 眠れる遺跡のアウトランダー
【ザ・ゴールデン2018エーファ編】


 

エーファの前には、豪華とはいえないが、
きちんと調理された人間の食べ物が並んでいる。

 

エーファ「これ食べちゃってもいいんですよね!?いいいいいいただきます!いただいちゃいますよ!」
久しぶりのちゃんとしたご飯!

 

ここのところ、行軍の合間、御世辞にも美味しいとは言えない…、
どろっとしたスープしか食べていないエーファには、
きちんと調理されていた食べ物というだけで、泣けてくるレベルのご馳走である。

 

たとえ、それがパンにスープ、コップ一杯のミルクという食事でも…だ。

 

エーファ「はぐっ!……ん?え??…え???」
しかしパンは口に入れる瞬間に消えた。

 

まだ手をつけていなかった、スープとミルクと共に。

 

そしてテーブルには、何故か羽根が生えたドーナツが鎮座していた。

 

エーファ「はい?」
天使のドーナツ「下賤な人間よ!余にひれ伏すがいい。」
エーファ「はぃいっ!?」

 

何故か羽根の生えたドーナツに話しかけられた。
しかも人間を見下している感満載の、ものすごく偉そうな口調で…。

 

と、そこで目が覚めた。

 

エーファ「っ!?」
目が覚めたと同時に視界ががくんと揺れる。
起き上がった際に、ベッドから転げ落ちてしまったのだ。

 

エーファ「にぎゃ!?……い、いた…あ…ゆ…、夢ぇぇえええ~…。」
変な時間に寝たせいか、妙な夢を見てしまった。

 

現在、エーファたちチョコレート傭兵団の面々が、町に着いたのが昼過ぎ。

 

まず今夜の宿をとって、そこから夕食までどうするかというところで、
団長のヴィクトリアが町へ飛び出してしまったのだ。

 

それを心配して副団長のエリアナと、彼女につき従うアップルパイ将軍も出かけてしまった。

 

エーファ「わ、私はまぁ参謀長ですしー!どかっと拠点に構えて作戦をですねー。」
などと言っているうちに、宿屋にあったベッドの誘惑に負けて寝てしまったのだ。

 

窓の外を見ると、日はすでに沈みきっていた。

 

エーファのいる室内には、階下の食堂から流れてきたと思われる食事の香りが充満していた。
きゅ~~~~~~~!

 

夢の中で食べそこねたせいか、いつも以上に悲壮な腹の音が鳴ってしまった。

 

エーファ「ま、まったく!みんなどこまで行ってるんですかね~。もう夕飯の時間だっていうのに…。」
一抹の不安と恥ずかしさを押し込め、エーファは階下の食堂へ行くことにした。

 

どうせヴィクトリアのことだ、
今頃、食堂の机いっぱいにお菓子をいっぱい並べて…。
エーファ「エーファさんもどうですかー?なんて呑気そうに言ってくるんですよ!どうせ。」

 

食事に誰も誘いに来てくれなかったことに、少しささくれながら階段を下りて行く。

 

エリアナ「フォークとナイフは斜めじゃなくて、お皿の外に垂直…えーと、まっすぐに…。」
ヴィクトリア「お~、文化的ってやつですね、むずかしーです。」

 

エーファ「……?」
食堂から、仲間の声とカチャカチャと食器が鳴る音がする。

 

エリアナ「あ、エーファさんおはよう。」
ヴィクトリア「あちゃー間にあわなかったですね。」

 

エリアナ「ううん、間にあったよ。むしろちょうどいいタイミングかな。」
ヴィクトリア「おぉ!セーフでしたか!!」

 

エーファ「…なんの話ですか?」
食堂には、予想していたお菓子山盛りの机ではなく、
エーファ好みの食事が並んでいた。
肉とつけ合わせの野菜、パンにチーズ、果物まである。

 

ヴィクトリア「エーファさん、最近おつかれでしたのでー。」
エリアナ「食堂の人に頼んで、エーファさん好みの夕飯を用意してもらったの。」

 

ヴィクトリア「ヴィクトリアも手伝ったんですよ!この食器をばーんと並べるのとか!」
エーファ「あぁそれで、こんな並びに…。」

 

食器の配置を見て、自分を置いてふたりだけで食事をするつもりだったのか…、
などと暗いことを考えてしまったのがバカバカしい。

 

ヴィクトリア「ささっ!さんぼーちょー席へどーぞ。」
エリアナ「いっぱい食べてくださいね。」

 

エーファ「……い、いただきます。」

 

ふたりに促され、すとんと席に座る。

 

目の前の分厚い肉は、軽くナイフを入れただけで簡単に切れてしまった。
切った肉は口に入れた途端、優しく消えた。

 

エーファ「お、おお美味しいい~~~!」

 

エリアナ「よかった。」
エーファ「~~~~というか、何してるんですか!私だけ座って食べてるなんて気まずいじゃないですか。」

 

エリアナ「それもそうだね、団長私たちも食べましょうか。」
ヴィクトリア「はい!今日はヴィクトリアもご一緒しますよー!」

 

エーファ「そ、それでいいんですよ。確かに美味しいですけど、このままでもすっっごく美味しいですけど!!みんなで食べたほうが…その…多分もっと美味しくなるんですよっ!!」

 

照れているせいか真っ赤になりながら、肉を切り分けるエーファはとても微笑ましかった。
その赤くなった顔を見て、ふとエリアナが思い出す。

 

エリアナ「そうだ、この近くに温泉っていうのがあるみたいでね。明日は傭兵団をお休みしてそこへ行ってみようか?」

 

エーファ「おおおお温泉ですか!?あの温かいお湯が大量にあって広々したところで入浴できるという!?」
エリアナ「うん、そう。」

 

ヴィクトリア「なるほど!疲れは蓄積させねーのが一番です!はっさんして行きましょー。」

 

エリアナ「温泉マンジューっていうお菓子もあるみたい。」
ヴィクトリア「おぉ!お菓子ならヴィクトリアのたんとーですね!」
エーファ「ははっ…、温泉マンジューとやらが食いつくされないといいですけどねー。」

 

ヴィクトリア「えへへへ、期待されちまったなぁ~。」
エーファ「いや違いますよ!?食べつくさないでくださいねっ。」
エリアナ「ふふ…。」

 

3人の楽しげな声は、より一層食事を豪華なものへと変化させていく。
こうしてチョコレート傭兵団の休暇は幕を開けた。

 

なお、これから行く温泉が硫黄泉でないことを、
アップルパイ将軍が願っていたとかいないとか…。

 

いずれにせよ、もの言わぬ彼からそれを聞き出すことはできない。