【ストーリー】ザ・ゴールデン2018ラディウス編
(※架空/二次SS) 喰牙RIZE
【ザ・ゴールデン2018ラディウス編】
ラディウス「久々に、いい飯にありつけそうだな。」
目の前には先ほど仕留めた鳥。
既に下ごしらえを終え、あとは焼くだけだ。
足元でパチパチと声を上げ始めていた火に、さらに薪をくべる。
ラディウス「少し、弱いか?」
この火力で大ぶりな肉を焼くには、時間がかかるかもしれない。
ラディウス「…ま、急ぐ旅ってわけじゃない。」
どうせ気ままな一人旅だ。
じっくり肉が焼けるまで、待つのもいいだろう。
それに待ち時間の間も、退屈しなくてすみそうだ。
ガサリと音をたて、近くの茂みが揺れた。
肉の焼ける匂いに誘われ現れた獣は、狼だろうか?
ラディウス「てめえの獲物はてめえで狩りな。」
獣に向けるラディウスの瞳は、現れた相手より獰猛な光を宿していた。
ラディウス「(これで引いてくれりゃ、いいんだが。)」
巷を騒がす獣「ガウゥゥウウウ!!」
牽制虚しく、獣がラディウスの元へ疾駆する。
ラディウス「やれやれ、…怨むなよッ!」
………
……
…
……
…
巷を騒がす獣「グ、グゥウ……。」
悔しそうな声をあげ、負けを悟った獣が森へ逃げて行く。
ラディウス「ま、飯前の運動にはなったな。」
戦闘終了と共に、獣の唸り声のような音が響いた。
ラディウス「…おっと。」
こんな腹の音を、昔の仲間の前で鳴らしたら、相当からかわれたであろう。
ラディウス「…あれから10年か。」
ふ、と昔に思いはせる。
その顔から牙は抜け落ち、10年前のまだ少年だった頃のように柔らかな表情だ。
思えば随分遠くまで来てしまった…。
国をこえるどころではない、世界をこえてここにいるのだ。
ラディウス「あいつらもこんな気持ちだったのかねぇ。」
過去ラディウスが所属していた騎士団は、
世界という境をこえクエス=アリアスへ来た人々を主に、構成された組織であった。
ラディウス「ま、あいつらも俺と同じで、どこの異界にいようが関係ねぇようなのばかりだったしな。」
良くも悪くも図太く強い。
いや図太く強いから、生き残っていたのか。
かさりと、再び茂みが音をたてる。
吠えられない獣「ガウガウナノー!ガウガウナノー!」
ラディウス「…なんだ、お前もさっきの奴の仲間か?」
吠えられない獣「ガウガウナノー!ガウガウナノー!」
ラディウス「……。」
変な鳴き声に、力が抜けた。
吠えられない獣「ガウガウナノー。」
獣のくせに警戒心がないのか、てとてととラディウスの元まで寄って来る。
吠えられない獣「ガウガウナノー?」
ラディウス「ん、…これが欲しいのか?」
先ほど採った木の実をつぶらな瞳が物欲しげに見ている。
吠えられない獣「ガウガウナノー…。」
ラディウス「変な奴だな、…ほらやるよ。」
敵意のない獣に牙をむくほど、ラディウスは飢えていない。
吠えられない獣「ガウガウナノー!」
ぺこりと頭を下げ、獣は茂みに消えていった。
ラディウス「なんだったんだ?……ん?」
先ほどの獣がいた場所に何か落ちている。
呪装符だ。
ラディウス「礼のつもりか?」
獣が御礼に呪装符を置いて行くなどあるのか?
ただの偶然か。
ラディウス「ま、せっかくだ。ありがたくいただくとするか。」
そろそろ鳥も焼けた頃だろう。
いい時間潰しになった。
ラディウス「そういや、この鳥も変な鳴き声だったな。」
数時間前まで、トリテンチャーントリテンチャーンと鳴いていた鳥を思い出す。
どうにも今日は変な鳴き声の獣に縁のある日だった。