【ストーリー】ザ・ゴールデン2018サクト編

(※架空/二次SS) 八百万神秘譚/八百八町あやかし捕物帳
【ザ・ゴールデン2018サクト編】


 

サクト「いでよ、いいお湯!」
とある温泉地に、若き戦神はいた。

長い雪の季節が終わり、行楽にも絶好の日和。

この時期は、長期休暇を取る神も多い。
サクトがいる温泉地は、休暇中の神が多く訪れる人気すぽっとであった。

より多くの神を癒すため、下界で人々を癒した実績のある、
「若き戦神」兼「湯の神」でもあるサクト・オオガミは助っ人、
いや、助っ神としてこの地に呼ばれたのだ。

スオウ「おー!相変わらず、いい湯だ!」
セイ「久しぶりだな。」
湯沸かしに精をだすサクトに、声がかかる。

サクト「これはお二方とも、休暇ですか?」
以前迷える自分に新しい道を示してくれた存在であり、戦神としての先輩でもある、
セイ・シラナミとスオウ・カグツチだ。

セイ「…そう、だな。」
スオウ「休むつもりはなかったけどなー。」
サクト「…?」
休暇を得たという割にそれぞれの表情はさえない。

セイ「ミコトを常に見守っているのは、れでーのぷらいばしーとやらに引っ掛かるらしくてな。」
スオウ「そーそー、あいつらに暫くは帰ってくるなーって追い出されちまったぜ。」
どうやら望んだ休暇ではないようだ。

スオウ「現 農具鍛冶と水田の神として、頑張ろうにも…。」
セイ「今は人々の活躍が目覚しく、神の…俺たちの力など必要なさそうでな。」

その顔は寂しげに見えるが、
神が必要とされないのは平和であるという考えなのか、満足げでもあった。

サクト「なるほど。」
スオウ「つーわけで!いっそ遊びに行くかーってんで、話題の行楽地へ来てみたわけだ。」
サクト「な、なるほど。」

ここへ来た経緯などを話しているうち、客として来ていた別の神から声がかかった。

泊まりで行楽に来た神「饅頭はあるかのう?」
サクト「おう!今さっき蒸しあがったぜ。」

日帰りで行楽に来た神「温泉卵はあるかしら?な、ないなら別にいいのよ?どうしても食べたいってわけじゃ。」
サクト「おう!あるぜ、なんなら剥いてやろうか?」

3日と3時間33分滞在している神「3番泉の湯が3℃ほど温いのですが?」
サクト「待ってな!すぐ追い炊きしてくるぜ。」

スオウ「…忙しそう、だなー。」
セイ「そうだな。スオウ、もう行くか。」

サクト「…っ。あぁっ!すみません、お二方また後ほど!!」
スオウ「おー、気にすんな!またなー。」


セイ「それにしても、もっと堅苦しいやつかと思っていたが…。」
スオウ「そうそう、意外と……って、セイが堅苦しいとか言うのも妙だけどな。」
接客をしているサクトはセイやスオウに向けた口調と違い、随分砕けていた。

スオウ「ま、楽しそうでなによりだ。」
セイ「そうだな。」

後輩の働きを微笑ましく思っているセイとスオウの前に、
見慣れた影が横切ったのは、そんな時だった。

スオウ「って!?おおぉおぉぉおお前なんでいるんだよ!!?」
セイ「まさかこの地を襲いに!?」
予期せぬ元同僚との出会い。

視線の先に捕えたのは、
先の戦で黄泉の国への追いやられた元戦神のカタバ・フツガリであった。

カタバ「……招待券、とやらを貰った。」
面倒な輩に会ったと、顔をしかめてはいるものの、
一応、経緯の説明はしてくれるようだ。

スオウ「は!?いやいやいや!そもそもお前、黄泉の国から出て来ていいのかよっ。」

カタバはサクトから貰ったと思しき招待券と共に、一枚の書状を拡げた。
見て察しろということか?
それ以上カタバは、セイに対してもスオウに対しても、口を開かない。

スオウ「えーと、何々…。」
その書状には八百万の神々の頂点であるやんごとなき御方が、
カタバ・フツガリの温泉地行きを許可する旨と、☆ぱすぽーと☆なる印が書かれていた。

セイ「……ま、まぁ上の方々も結構ゆるいからな。」
スオウ「お、おう。」

何せ神々は八百万。
数が多すぎる弊害か、その頂点たる神々も結構色々なところが、
厳しかったり、ゆるかったりと適当だったりする。

そう温泉に熱い温泉も、温い温泉もあるように…。
酸性もあれば、あるかり性もあるように…。
深く気にしてはいけないのだろう。

サクト「あ!カタバさーーん!お元気でしたかーーー!」
カタバ「……おう。」
カタバに気がついたサクトが遠くから、手を振っている。
両手に卵の殻を持ちながら…。

スオウ「…なんだかな~。」
セイ「まあ、いいじゃないか。」
スオウ「……そうだな、俺たちも今は休暇中だしな。」
こうして戦神(元多数)たちの温泉巡りは始まった。