【ストーリー】前半フェーズ、魔王が来たにゃ

(※架空/二次SS) エス=アリアス
【前半フェーズ、魔王が来たにゃ】



エス=アリアスに発生する異界の歪み。
その歪みから、脅威がやって来る事は、珍しいことではない。

君とウィズは境界騎士団からの依頼で、今回歪みが発生する予測地点へ向かっていた。
ウィズ「ここにゃ。」

確かに、上空に歪みが発生し始めている。
しかし今のところ異界の歪みから何かが現れる気配はない。

と思ったとたん何かが、飛んで来て…。
???「ぉぉおおおおおおおおお!」
エス=アリアスの大地に突き刺さった。

もうもうと土煙が静まったあとに、現れたのは…。
ウィズ「にゃにゃ!なんでここにいるにゃ。」
エターナル・ロア「…つぅぅ…。まったく小娘ぇえええ!!あれほど投げるなと!!」
君たちの見知った顔…いや見知った杖だった。

突き刺さったエターナル・ロアは、杖の光を明滅させながら、周囲を確認しているようだ。
感情が昂っているせいか、状況把握を並行し、ぶつぶつと不満の言葉をもらしている。

エターナル・ロア「それにしてもここはど……。」
と、言葉の途中で君たちを見止めた杖がはっと瞬いた。

エターナル・ロア「え?」
エス=アリアスへようこそ、と君は言った。

エターナル・ロア「え?どこ?」
ウィズ「いつもいるところとは別の世界にゃ。」

エターナル・ロア「小娘の肩どこまですごいのッ!?」
とりあえず異界から脅威が来た訳じゃなくて、よかったなと思いながら、
君はエターナル・ロアに目を向ける。

ウィズ「とはいえ、このままって訳にもいかないにゃ。」
そうだよね。
エターナル・ロア「なら魔法使い!ほら我を手に取れ!!そうしたら我、自分でなんとか頑張るから!!頑張って帰るから!!!」

ウィズ「だめにゃ。それだとキミの体が持ってかれちゃうにゃ。」
エターナル・ロア「ちゃんと返すから!」

今なら歪みはまだ開いている。
このまま投げ返せば体がなくとも戻れると思う、と君は意見を述べた。

エターナル・ロア「おお!!」
嬉しいのか、地面に突き刺さった杖が、うにうにと動いている。

エターナル・ロア「ならばやってくれ黒猫の!」
ウィズ「でもかなり深く突き刺さってるにゃ…。」
そのようだ。

それに自分の肩では上空にある歪みまでザッパー…もとい投げ返すことは難しい。
君は少し考え、カードを構えた。

エターナル・ロア「待て……。待て待て待てぇッ!!!?黒猫の!?何故カードを構えた!?」
ウィズ「魔法でぶっ飛ばすにゃ!」
さすが師匠。
自分のやることがわかっているようだ。

エターナル・ロア「いやもっとこう穏便にだな…アイタァ!!!?」
歪みはいつ消えるかわからない。
君は焦りとともに魔法を放つ。

エターナル・ロア「!?!!!?????」
君の放った魔法がエターナル・ロアへと次々被弾する。
エターナル・ロア「我、動けない…!!」

地面から杖が抜けないのを確認し、君は再びカードに魔力を込めた。
ウィズ「もっとにゃ。もっとやれば動けるようになるにゃ!!」

エターナル・ロア「ちょっと待てぇえええ!?そういう意味じゃない!そういう意味の我、動けない……!!じゃないからぁああ!!?我は動けないのだからそれを狙いうちするなとッ!?」
師匠の言葉に従い、君は再び詠唱に入る。
精霊へよびかけている君に、杖の声は届かなかった。

君は魔法をひとつ、ふたつ…と重ねる。
エターナル・ロア「だから違……え?あれ?これ、もしかして……ボコられるやつ?これもう問答無用でボコられる流れ?」

みっつ…、よっつ…、いつつ!
ウィズ「今にゃ!!」
エターナル・ロア「アッーーーー!」
君の魔法をさらに浴びた杖がボロリと大地から抜け、ガランッと横倒しになった。

エターナル・ロア「我…もー…だめ……。」
ウィズ「やったにゃ!」
恐ろしくしっかり刺さっていたなと君は思いながら、
次の準備に取り掛かる。

そこからさらに上空の歪みまでぶっ飛ばすためには、高威力の魔法が必要だ。
と、そこへエターナル・ロアの金属光沢に魅せられた、クエス=アリアスの魔物が、物陰から現れた。

ウィズ「にゃ?」
君がこれでもかと魔力を貯め詠唱を重ねている隙に、魔物はエターナル・ロアを手に取り、そしてエターナル・ロアは体を得た。

ウィズ「にゃにゃ!?」
ゴォッと巻き起こった魔力の奔流に押され、君は詠唱を止めざるを得なかった。

エターナル・ロア「ふはははは!体さえ手に入ればこっちのものだ!!我のことは我がなんとかする!」
体を手に入れたロアは、強気な態度で、君とウィズへ向き直った。

ウィズ「そうはいっても、クエス=アリアスの魔物を異界に連れて行かれるのも困るにゃ。」
そうだね、何がおこるかわからないしと君も渋い顔をする。

エターナル・ロア「ぬぬぬぬ。」
ウィズ「おとなしく、私の弟子にぶっ飛ばされるにゃ。」
エターナル・ロア「そんな提案却下だ却下!!素直で優しいロアちゃんはもういないのだ。我は我の勝手にさせてもらう!!」

魔法で狙いうちにしたのが、悪かったのかな…と君は頑なになってしまったエターナル・ロアの態度を見て、申し訳ない気持ちになった。

ウィズ「仕方ないにゃ。キミの肩はそこまで強くないにゃ。」
肩ではなく魔法という手段を選んだ君を師匠がフォローする。

エターナル・ロア「我が帰るのを止めるというなら、魔杖の力…存分に味わうがいい!…先ほどの魔法の礼もあるしなあ!」
若干涙ぐんでいるエターナル・ロアを見て、やはりさっきのあれは相当ストレスになってしまったのだなと君は再度申し訳ない気持ちになった。

君が罪悪感を覚えている間に、体を得たエターナル・ロアは潤沢な魔力を放出し、様々な魔法を繰り出していく。
ウィズ「にゃ~~~。」
さすがは魔杖だ
君はウィズを離れた場所へ逃がし、ひたすら防御に徹する。

エターナル・ロア「ふははは!どうだ!!我、魔王だぞ!!」
彼は高らかに笑っていたが、
はっきりって無理して悪ぶっているようにしか見えない。

確かに今の彼は頭に角も生えているし、服装もいつもより魔王らしくクールな感じではあった…が、
やはり無理して悪ぶっているようにしか見えない。

何故なら、先ほどから君を支援するような、魔法が飛んでくるようになったからだ。
めちゃくちゃ優しいな…と思いつつ君は、魔王エターナル・ロアの支援を受け、より威力の高まった魔法を放つ。

エターナル・ロア「!?」
君と魔杖の合わせ魔法を受けた、エターナル・ロアは乗っ取った体から離され――。
エターナル・ロア「ごっはぁッーーー!!?」

勢いを落とせぬまま、歪みのある空へとぶっ飛ばされた。

はじめこそ抵抗はしたものの、結局ぶっ飛ばされ、杖単体で異界へ戻って行ったのだ。
魔王…優しいな、と君は思った。
意地を張って戻れなくなった子どもを、家路へと導いてあげる気持ちとはこんなものだろうか?
不思議な達成感を覚えつつ、戦闘中に離れていた師匠の元へ向かう。

ウィズ「お疲れさまにゃ。」
ウィズの尾が労うように、パシリと足にあたる。

とはいえ、見知った相手だ。
気は楽だったよと君は笑った。

息をひとつ吐き出し、ふと…思ったことを口にする。
また飛んできたりしてね、と。

あの無茶苦茶な異界ならそれもありえそうだ。
ウィズ「そうしたらまたぶっ飛ばしてあげるにゃ!」
そうだね。
君はカードをしまい、ぐるりと肩をまわす。

 

後半フェーズ

 


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