【ストーリー】木を燃やして、煙を…

(※架空/二次SS) エス=アリアス
ノクトニアポリス、クルイサストーリーネタバレを含みます。
【木を燃やして、煙を…】



その日、君とウィズは魔道士ギルド中央本部であるノクトニアポリスに来ていた。

ルベリ「まったく夏季休暇だなんだと周りが休むせいで、いつも以上に忙しい。」

訪ねたルベリの執務室は、山となった書類で埋めつくされ、
それに囲まれているルベリはぶつぶつと文句を言いながらその山と格闘している。

 

大変だね、と君は不機嫌なルベリに返した。

 

ルベリ「今すぐ四聖賢になってここを手伝ってくれてもいいんだぞ?」
ウィズ「駄目にゃ。私の弟子は渡さないにゃ。」
挨拶代わりと、ウィズとルベリが軽い会話を交わす。

 

ルベリ「だろうな、それで要件はなんだ?」
見ての通り忙しいと、話を切ろうとするルベリだったが…、
君の様子を見て、仕事の手を止めた。

 

ルベリ「………。」
流石は、中央本部を仕切るだけある。
彼は空気を読む力にも長けていた。

 

ルベリの聞いてやるから話せという視線を受け、君は口を開く。
そうしてお盆だから…と、言って君は顔を歪めて笑った。

 

ルベリ「…お盆?」
ウィズ「私の弟子いわく、亡くなった人をもてなして供養する期間らしいにゃ。」
特に彼にとっては新盆になると君は付け足す。

 

ルベリ「新盆?…聞いたことのない風習だな。」
どこかの異界で聞いたのか、はたまたクエス=アリアスへ渡る前の記憶か…。
君自身にもよくわからない。

 

ルベリ「まあいい。それでそのお盆、新盆とやらをやりにここへ?」
そうだよ、と君はまたくしゃりと笑った。
会うことはできなかったが、彼には恩がある。

 

せめて関係者の元へ、そして家族がいるなら家族の元に還し弔ってあげたかった。
ことり…とルベリの執務机の上に、彼の遺品を置く。

 

ルベリ「…流石というか、君らしいな。」
会ってもいない人の為に、わざわざノクトニアポリスまでやって来るとは…。

 

ウィズ「にゃは、キミは病気レベルのお人好しにゃ。」
ウィズだってここに来るのを反対しなかったよね?と君は反論した。

 

ウィズ「弟子の憂いを解くのも師匠の仕事にゃ、私はあくまでキミの付き添いにゃ。」
ウィズも彼の事を気にしていたというのに、またそんな強がりを…。

 

ルベリ「は…、私はやはり無力だな。」
ルベリが命じた任務で消えた命だ、彼も思う所があるのだろう。
机の上の遺品に向けられた顔は苦しげだった。

 

ウィズ「ルベリのせいじゃないにゃ。」
ごめんと、君は謝る。
任務を命じたルベリより、あの時クルイサにいた自分の方が彼の命を助けられた可能性は高かった。

 

ウィズ「キミも、考え過ぎにゃ!」
暗くなったふたりをたしなめる様に机に乗ったウィズが、手をてしてしと叩く。

 

ルベリ「いや、そうだな。彼の死を自らの責とするのは、彼自身を馬鹿にする事にもなる。」
ウィズ「そうにゃ。」
師匠に励まされ、君は改めて敵わないなあと微笑んだ。

 

ルベリ「それで何をすればいい?」
まず…と言って君は、お盆にすることを説明しはじめる。
クルイサで散ってしまった彼ことマッチモの為に――。
 

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