【ストーリー】聖なる星のフェスティバル
(※架空/二次SS) 聖なる空のエステレラ
【聖なる星のフェスティバル】
ウィズ「にゃ?クレティアたち集まってなにしているにゃ。」
夏の星座が輝く空の下、色紙で飾られた枝を囲む4人の少女の元に、黒猫が近づく。
ウィズ「なにやら楽しそうな気配がするにゃ。」
クレティア「お、さっすがウィズちゃん、その輝く猫目は飾りじゃあないね。」
ウィズ「にゃはは!」
そう四聖賢のウィズの名は伊達ではない。
ウィズの知識欲や好奇心はかなりのものなのだ。
異界の面白そうなこととなれば、首を突っ込まずにいられない。
この場に弟子である黒猫の魔法使いがいたら、やれやれと呆れながらも付き合っただろうが、
あいにく今は別行動で休憩中だった。
ウィズ「それでこれはなんにゃ?」
リアラ「これはですね、願いが叶う飾りなんです!」
ウィズ「にゃにゃ?」
クレティア「そうそう、己の願いを筆で短冊にしたためよ!さすれば〈聖なる星のフェスティバル〉にて汝の願い叶わん!ってね。」
ウィズ「………まぁ大体わかったにゃ。」
四聖賢ゆえの賢さか、ほぼ月2で鍛えられている異界移動のせいか…。
とにかくウィズは少女たちの断片的な言葉から彼女たちがやろうとしていることを理解した。
ヒカリ「本来は下界でやっているお祭りなんだけど、感化された女神様がいてねー。」
ソラナ「せっかくだからエークノームでもやりたいって…。」
ヒカリ「おかげで私とソラナは準備に大わらわ!大変だったんだから。」
迷惑にも程があると、ヒカリの顔は不機嫌そうだ。
クレティア「とかいっちゃって、すっごく楽しそうに準備してた~って、女神様たちから聞いたよー?」
ヒカリ「それ、は…。」
確かに大変だった分、楽しかったのも事実だ。
ウィズ「にゃはは、ヒカリの顔が赤くなったにゃ。図星を指されて照れているのかにゃ?」
ヒカリ「~~もういいから、ほらみんな早く書いて!」
話の矛先を自分から逸らそうと、ヒカリがウィズたちに短冊を渡しはじめた。
ほとんどの短冊はすでに枝に飾ってあるのだ。
あとはここにある数枚さえ書いて、飾れば全ての作業が完了する。
ソラナ「あら?ヒカリは書かないの?」
みんなに短冊を渡し終えたヒカリの手元には、筆も短冊も残っていない。
ヒカリ「んー私の願いはね、無理難題をいってくる女神さまが減りますようにとか――、ノインがもう少し真面目になりますようにとか――。」
出てくる願いごとを数えるように、ヒカリの両指がどんどん折れていく。
ソラナ「た、たくさんあるのね。」
ヒカリ「あとソラナと来年も一緒に今日みたいな日を過ごせますようにとか?」
10本目の指が折れると共に出てきた、これまでとは少し毛色の違う願い。
ヒカリの願いの中に自分が組み込まれていたことを知り、ソラナの顔が恥ずかしさと嬉しさでほんのり色づく。
ソラナ「ヒカリったら…。」
ヒカリ「ふふ、こんな感じのがたくさんありすぎちゃって、短冊に書き切れないし……、いっそ書かないでもいいかなーって。」
この催しの趣旨とはずれるが、胸においておくのも悪くないだろうと自分を納得させる。
ソラナ「ヒカリ…。」
実のところ、ウィズが来たことにより短冊の数が足りなくなったのだ。
そのことに遅れて気がついたソラナたちの間の空気が少し重くなる。
元凶であるウィズも、申し訳なさから耳がぺたんと下がってしまった。
ウィズ「ご、ごめんにゃ。」
ヒカリ「だからいいってば。」
本人がいいといっているのだ、これ以上遠慮するのもよくないだろう。
ウィズ「ありがとうにゃ。」
ヒカリ「うん。」
重くなった空気はあっという間に消え、穏やかな一時に戻っていく。
ソラナ「そうだ。私の短冊に〈ヒカリの願いが少しでも多く叶いますように〉って書くわ。」
ヒカリ「え、えぇ?ソラナはソラナの願いを書いてよ。」
ソラナ「ううん私の願いもヒカリと一緒だから。」
ヒカリ「ソラナ……。」
ひとつの短冊をふたりで使うというのは、いっそ彼女たちらしいかもしれない。
クレティア「やーやー!仲良きことは美しきかなだねー。」
クレティア「おっ暑苦しいねー!嫌いじゃないよー、そのマーガレット気!」
リアラ「〈暑苦しすたーず〉には加入しませんけどね!」
ウィズ「にゃはは。」
そこでふと、クレティアはあることを思い出した。
クレティア「あれ?そういえば…リアラの聖女試験って―。」
リアラ「――!?しっ!クレティア!!その件は公開前の案件ですので!!!」
クレティア「お、なるほどなるほどいわぬが花ってやつだね。」
リアラ「なんか違う気がしますけど、とにかく今は触れないでください。」
クレティア「りょうかい、りょうかいー、いつか日の目を見るといいねぇ。」
リアラ「不吉ないい方はやめてください。」
クレティア「にひひ。」
少女たちの楽しげな声は夜空へ広がり、空に輝く星たちの光はより柔らかなものへと変わっていく。
こうしてエークノームの平和な夜は更けていった。